- 住まい(戸建/マンション高層階/オール電化)と季節(夏/冬)、同居家族で変わる必要量を数式と実数で確定する
- 停電=断水になるマンション特有の問題を、水道局の一次情報から具体化する
- ほとんどの記事が触れない「停電<後>」(通電火災・発電機のCO中毒・冷蔵庫の廃棄基準)を手順化する
停電で必要なものは結局どれ?まず揃える7点と優先順位
実際の停電はどれくらい続くのか
「3日分」は都市部での短期停電を想定した最低ラインです。倒木や道路寸断が起きやすい郊外・山間部、離島では復旧がさらに延びる可能性があるため、地域差を前提に日数を上乗せしてください。
わが家の停電必要量はどう計算する?自動算出フォーミュラ

6項目の計算式
- 飲料水=3L × N × D
- 生活用水=20Lポリタンク × ⌈N × D ÷ 10⌉(トイレ・手洗い用。マンションは必須)
- カセットボンベ=⌈0.45(夏)または0.65(冬)× N × D⌉本
- 携帯トイレ=5回 × N × D
- モバイルバッテリー容量=3,000mAh(スマホ1台分)× N × D × 1.2(変換ロス)
- 乾電池=(懐中電灯2本 × 部屋数 + ラジオ3本)× 2セット
4パターンの実数値
| 品目 | 計算式 | 一人暮らし(1人3日) | 夫婦(2人7日) | 4人家族(4人7日) | 高齢親宅(2人7日・冬) |
|---|---|---|---|---|---|
| 飲料水 | 3L×N×D | 9L | 42L | 84L | 42L |
| 生活用水 | 20L×⌈N×D/10⌉ | 20L(1個) | 40L(2個) | 60L(3個) | 40L(2個) |
| カセットボンベ | 夏0.45/冬0.65×N×D | 夏2本/冬3本 | 夏7本/冬10本 | 夏13本/冬19本 | 10本 |
| 携帯トイレ | 5×N×D | 15回分 | 70回分 | 140回分 | 70回分 |
| モバイルバッテリー | 3,000mAh×N×D×1.2 | 10,800mAh | 50,400mAh | 100,800mAh | 50,400mAh |
| 乾電池(単3等) | (2×部屋数+3)×2 | 約14本(1K想定) | 約22本(4部屋) | 約26本(5部屋) | 約22本(4部屋) |
生活用水を飲料水と同じ枠で数えないでください。トイレ1回の洗浄には数リットル必要で、飲料用の備蓄はすぐに底をつきます。マンションでは特に、次の章の理由で生活用水の確保が生死を分ける負担差になります。
なぜ停電すると断水するのか?マンション高層階に必要なもの
停電によりポンプが停止すると、水道が使用できなくなる場合があります。(大阪市水道局「停電によるビル・マンション等の断水に備えましょう」2024年)
3階以上で追加すべき4点
- 生活用水20L以上(ポリタンク+浴槽への貯め置き):トイレ洗浄用。給水車が来ても、水を部屋まで運ぶのは自力です
- 携帯トイレ:水が運べない前提で、流さずに処理できる手段を確保します
- 階段用ヘッドライト:手すりを持ち、荷物も持つため、両手が空く照明が必須です
- 食料の「上げ置き」:エレベーター停止を前提に、重い水・食料を平時から自宅内に置いておきます
戸建てで追加すべきもの
あなたの家に足りないのはどれ?4問の分岐チャート
Q1 住まいはどちらですか
- マンション3階以上 → 生活用水20L以上/携帯トイレ/階段用ヘッドライト/食料の上げ置き(受水槽・増圧ポンプ停止で断水するため)
- 戸建て → 感震ブレーカー(普及率5.2%・通電火災対策)
Q2 調理の熱源は何ですか
- オール電化・IH → カセットこんろは「代替」ではなく生命線です。1台では調理と湯沸かしが競合するため2台想定にし、ボンベも上の式どおり確保します
- 都市ガス・プロパン → 加熱手段は残る可能性が高いため、電源の使い道を情報収集と照明に振り分けます
Q3 同居・近居の家族は
- 乳幼児がいる → 液体ミルク(常温で授乳可能)+使い捨て哺乳ボトル。お湯が作れない前提の備えです
- 高齢の親と別居 → 停電情報アプリに実家の地域を登録します。東京電力パワーグリッドのTEPCO速報アプリは最大8カ所を登録でき、自宅・実家・勤務先を同時に監視できます(各エリアの停電情報は送配電網協議会のページから確認できます)。あわせて、充電済みの携帯電話を親に持たせておくと、停電で固定電話が使えない場合の代替になります
- 在宅医療機器がある → 次章で詳述します
Q4 季節はどちらを想定しますか
- 夏 → 電池式扇風機、冷却シート、経口補水液。停電下の熱中症は実際に死者を出しています
- 冬 → 石油ストーブまたはカセットガスストーブ、寝袋、湯たんぽ。ボンベは夏の約1.4倍
石油ストーブやカセットガスストーブを使う場合は、必ず定期的な換気を行ってください。締め切った室内での使用は一酸化炭素中毒の危険があります。
高齢の親・在宅医療機器がある家庭で必要なものは?
準備すべき5点
- 外部バッテリー複数台:1台では復旧までもちません。常時満充電を維持します
- 購入日ラベルでの寿命管理:本体に購入年月日を書いたラベルを貼り、劣化前に交換します
- 酸素ボンベの備蓄:濃縮器が止まる前提で本数を確保します
- 電力会社への事前登録:多くの電力会社が在宅医療機器使用者の登録制度を設けています。契約中の送配電事業者に確認してください
- 24時間連絡先のメモ:主治医・訪問看護・機器メーカーの連絡先を、紙で機器のそばに貼ります
離れて暮らす親の停電に気づく方法
在宅医療機器の停電対応は、機器の種類・設定・持病によって必要な備えが異なります。ここに書いた内容は一般的な考え方です。具体的な準備は必ず主治医・訪問看護師・機器メーカーに個別にご相談ください。
停電<後>の90分に何をすべき?チェックリスト
発生直後(0〜10分)
- ブレーカーを落とす(特に避難する場合は必ず)
- 電熱器具・ドライヤー・電気こんろのプラグを抜く
- 冷蔵庫の扉に「開けない」と付箋を貼る(後述の4時間ルール)
- 停電情報アプリで、地域の停電か自宅のブレーカー落ちかを切り分ける
10〜60分
- 発電機を使う場合は必ず屋外、かつ窓や換気口から離して運転する
- ポータブル電源とモバイルバッテリーを、高温になる場所から移動させる
- 実家・家族へ安否連絡を入れる(通信は長くもたない前提で早めに)
- スマホを節電モードにし、画面の明るさを下げる
復旧時
- 水濡れした家電は、通電前に外観を点検する
- プラグは1台ずつ差し、異音・異臭・発熱がないか確認する
- 冷蔵・冷凍食品を判断する(次章の時間基準を参照)
後日
- 使ったボンベ・電池をすぐ補充する
- 製造から6〜7年を超えたカセットボンベ・こんろを交換する
- 劣化したモバイルバッテリーを正規の回収窓口へ出す
停電時の冷蔵庫、捨てる基準はどこ?
| 保存場所 | 安全に保てる目安 | 前提条件 |
|---|---|---|
| 冷蔵室 | 約4時間 | 扉を開けない |
| 冷凍室(満杯) | 約48時間 | 扉を開けない |
| 冷凍室(半量) | 約24時間 | 扉を開けない |
上記はCDC(米国疾病対策センター)が示す目安です。乳幼児・高齢者・妊娠中の方・持病のある方が口にするものは、より慎重に判断してください。少しでも不安があれば廃棄をおすすめします。
備えた道具が事故になる?モバイルバッテリーの保管と廃棄
防災備蓄でやりがちな3つのNG保管
- 車のダッシュボードやトランクに常備する:夏の車内は高温になり、リスクが高い保管場所です
- 南向きの押し入れ・ベランダ収納に数年放置:買ったまま点検しない備蓄は、劣化に気づけません
- 膨らんだバッテリーをそのまま保管し続ける:外装が膨らんでいるものは使用を中止してください
古いモバイルバッテリーの手放し方
専門家・公的情報はどう見ているのか
| 発信元 | 年 | 要点 |
|---|---|---|
| 内閣府 中央防災会議 最終報告 | 2013年5月 | 家庭備蓄は最低3日、南海トラフ想定では1週間分以上 |
| 内閣府 令和2年版 防災白書 | 2020年 | 令和元年房総半島台風で最大約93万4,900戸が停電、断水・通信障害が連鎖 |
| 消費者庁・経産省・NITE 合同注意喚起 | 2023年8月29日 | 発電機の屋内使用はCO中毒で死亡事故に。復旧後は1台ずつ通電確認 |
| NITE プレスリリース | 2026年7月15日 | リチウムイオン電池搭載製品の事故2,140件(5年間)、8月がピーク |
| 大阪市水道局 | 2024年 | 受水槽・増圧ポンプ停止で建物が断水、高層階は運搬が負担 |
| 岩谷産業 | 2024年 | カセットボンベ消費量は気温で変化(25℃と10℃で差) |
| 日本ガス石油機器工業会(JGKA) | 2025年 | カセットこんろ・ボンベは製造から6〜7年で交換推奨 |
ここに挙げた数値は各機関の発表時点のものです。制度や基準は更新されるため、実際に準備・判断する際は各機関の最新ページをご確認ください。
停電時にやってはいけないNG対応
- 発電機を屋内・ガレージ・車内・テント内で使う:一酸化炭素中毒の死亡事故につながります。必ず屋外で、開口部から離して使用してください
- 避難時にブレーカーを落とさない:復旧時の通電火災の主要因です
- 復旧後にすべてのプラグを一斉に差す:異常のある機器を見逃します。1台ずつ確認してください
- 停電中に冷蔵庫を何度も開ける:4時間ルールの前提が崩れ、食品が早く傷みます
- モバイルバッテリーを高温の車内・直射日光下に保管する:事故が8月にピークとなる理由の一つです
- ろうそくで長時間の照明をまかなう:転倒や引火のリスクがあります。LEDランタンやヘッドライトを使ってください
台風接近時の「浴槽に水を貯める」は生活用水として有効ですが、小さなお子さんがいる家庭では溺水事故の危険があります。ふたを閉める、浴室に鍵をかけるなどの対策を必ず併用してください。




