まな先生解説
こころ質問
すい要点整理
- 原因を切り分ける(並ばなくていいケースの除外)
- 拠点で受け取る(自治体の災害時給水ステーション)
- 自室まで運び上げる(エレベーター停止時の往復回数計算)
結論:マンションの給水は「原因切り分け→拠点→運搬」の順で決まる
全体の流れ(5ステップ)
- 家中の蛇口を全部閉める — 復旧は予告なく起こるため、開いたままだと漏水事故になります。最優先です。
- 断水の原因を切り分ける — 停電の有無、近隣の断水状況、工事告知の有無を確認します。
- 受け取り場所を決める — 建物内(1階の直結栓・受水槽給水栓)か、自治体の給水拠点か、管理会社手配の給水車か。
- 容器と運搬手段を用意する — 背負える容器が基本。20Lポリタンクは階段では運べません。
- 受け取った水を管理する — 受取日を油性ペンで書き、常温3日・冷蔵10日を目安に使い切ります。
注意
給水拠点の運用・容器の指定・開設場所は自治体によって大きく異なります。この記事の数値は東京都・大阪市・熊本市・川崎市などの公表資料に基づくものです。必ずお住まいの自治体の水道局サイトで最新情報をご確認ください。
断水したら最初の10分:原因切り分けチャート

4つの出口:行き先・持ち物・所要時間・飲用可否
| 型 | 行き先 | 持ち物 | 想定所要時間 | 飲用可否 |
|---|---|---|---|---|
| 【A】建物内ポンプ停止型 | 1階の水道本管直結栓/受水槽給水栓(管理会社に位置確認) | 給水袋、懐中電灯、キャリーカート | 15〜30分(建物内で完結) | 直結栓は飲用可。受水槽の水は残留塩素0.1mg/L未満なら生活用水限定 |
| 【B】地域断水型 | 自治体の災害時給水ステーション | リュック型給水袋、油性ペン、軍手、身分証 | 1往復1時間半〜2時間 | 飲用可(受取日を記入して管理) |
| 【C】専有部・建物内故障型 | 管理会社へ連絡(拠点は開設されない) | 管理会社手配の給水車待ち | 数時間〜翌日 | 手配内容による |
| 【D】計画断水型 | 前日の汲み置きで完結。給水所は不要 | 浴槽・ポリタンク・ペットボトル | 事前準備30分 | 汲み置きは常温3日が目安 |
注意
川崎市上下水道局によると、受水槽給水栓の水を飲用にする場合は、濁り水を排水したうえで透視度・色・味・臭い・濁度の確認と残留塩素0.1mg/L以上の測定が条件です。生活用水として使うなら確認結果によらず使用できます。設置は自己負担・事前申込制で、受水槽の周囲1メートル以内という位置条件があります。
マンションの給水方式で断水の起き方が変わります
| 給水方式 | 仕組み | 停電したら | 建物内で水を取れる可能性 |
|---|---|---|---|
| 直結直圧方式 | 本管の圧力で直接各戸へ | 水は出る(低層のみ採用) | 各戸の蛇口がそのまま使える |
| 直結増圧方式 | 途中の増圧ポンプで加圧 | 上階から順に断水 | 1階の直結栓なら出る可能性 |
| 受水槽方式 | 受水槽に貯めてポンプ送水 | 送水停止・タンク内に水は残る | 受水槽給水栓があれば取水可 |
| 高置水槽方式 | 屋上タンクから重力で配水 | タンク残量分は出る | 残量が尽きるまで各戸で使える |
給水所でもらう水は何リットル?必要量とのギャップ
| 区分 | 1人1日あたりの量 | 出典・状況 |
|---|---|---|
| 震災直後の給水目安 | 3L(=3kg) | 東京都水道局 |
| 実際にかかった給水制限 | 4〜5L | 令和8年熊本地震(産業医科大学 災害産業保健センター) |
| 生活用水込みで必要な量 | 10〜20L | 応急給水の段階目標(3日目まで3L→10日目安10〜20L) |
高層階で水を運ぶ「何往復問題」を数字で解く
計算式
- 1日必要量 = 人数 ×(飲用3L + 生活用水α)
- 1回の運搬量 = 容器スペック(2Lペット×3本=6L/給水袋6L/給水リュック10L=約10kg/ポリタンク20L=約20kgでキャリー必須)
- 往復回数 = ①÷②(切り上げ)
- 所要時間 = 往復回数 ×(移動30分+待機45分+搬入15分×階数係数)
容器別のスペック
| 容器 | 容量 | 満水時の重さ | 階段運搬 |
|---|---|---|---|
| 2Lペットボトル×3本 | 6L | 6kg | 現実的 |
| リュック型給水袋 | 6L | 6kg | 現実的(東京都水道局の非常用給水袋は最大6L・背負い式) |
| 給水リュック(自作) | 10L | 約10kg | 短距離なら可 |
| ポリタンク | 20L | 約20kg | 階段では非現実的。キャリー必須 |
世帯別・階数別の往復回数と所要時間(飲用のみ/1日分)
| 世帯 | 1日必要量 | EV稼働 | 階段5階 | 階段10階 | 階段15階 |
|---|---|---|---|---|---|
| 単身 | 3L | 1往復/約1時間30分 | 1往復/約1時間38分 | 1往復/約1時間45分 | 1往復/約1時間53分 |
| 夫婦2人 | 6L | 1往復/約1時間30分 | 1往復/約1時間38分 | 1往復/約1時間45分 | 1往復/約1時間53分 |
| 4人家族 | 12L | 2往復/約3時間 | 2往復/約3時間15分 | 2往復/約3時間30分 | 2往復/約3時間45分 |
| 高齢親2人と同居(4人) | 12L | 2往復/約3時間 | 2往復/約3時間15分 | 2往復/約3時間30分 | 2往復/約3時間45分 |
逆算:備蓄を増やせば往復が減る
| 備蓄量 | 4人家族で何日分か(飲用3L/人) | 減らせる往復回数(10Lリュック換算) |
|---|---|---|
| 36L(3日分・最低ライン) | 3日 | 4往復分 |
| 60L | 5日 | 6往復分 |
| 84L(7日分) | 7日 | 8往復分 |
断水の給水はもらい方と持ち物で決まる:チェックリスト
(A)出発前に持つもの
- [ ] 給水袋6L、または給水リュック(ゴミ袋2枚+リュックで自作可・袋以外は入れない)
- [ ] 折りたたみキャリーカート(20Lポリタンクは徒歩運搬不可の前提)
- [ ] 養生テープと油性ペン(容器に受取日を書く)
- [ ] 軍手(容器の持ち手が手に食い込みます)
- [ ] 保冷バッグ(夏場の運搬用)
- [ ] 小分け用ペットボトル
- [ ] モバイルバッテリー
- [ ] 身分証
- [ ] 水道局サイト・アプリで開設状況を確認済みか
注意
令和8年熊本地震では、熊本市の8月3日の最高気温が40.3℃、4〜5日も38℃予想という猛暑下での給水所通いになりました(産業医科大学 災害産業保健センター、2026年)。夏場は保冷と自分自身の水分補給、時間帯の選択が安全に直結します。
(B)受け取ったあとの管理
- 容器に受取日を油性ペンで記入する
- 飲用は常温3日程度・冷蔵庫10日程度を目安に管理する
- 期限を過ぎたら捨てずにトイレ・洗い物などの生活用水へ回す
- 浄水器に通さない・沸かさない
(C)高層階・高齢親・単身世帯の代替手段
| 状況 | 代替手段 | わが家の担当者 |
|---|---|---|
| エレベーター停止 | 同フロア・近隣世帯と共同運搬(1回あたりの量を分散) | ______ |
| 高齢の親が単独 | 管理組合の給水当番・共助の枠組みに登録 | ______ |
| 待機時間が長い | 時間帯を朝一/夕方にずらして待ち時間を圧縮 | ______ |
| 車がない | 折りたたみキャリーカートで平地区間だけ効率化 | ______ |
| 1階の直結栓が使える | そこから小分けで階段搬送(拠点往復ゼロ) | ______ |
補足
このチェックリストは、そのまま冷蔵庫に貼れる形を想定しています。担当者欄を平常時に埋めておくと、発災後に「誰が行くか」で迷う時間がなくなります。
手順を順番に詳しく解説:受け取りから自室まで
手順1〜3:断水を確認して受け取り先を決める
- 家中の蛇口をすべて閉める。 台所・洗面・浴室・洗濯機・屋外水栓まで。復旧は予告なく起こるため、開いたままだと水浸しになります。
- 断水の範囲と停電の有無を確認する。 ベランダから近隣の様子を見る、水道局サイトを見る、エントランスの掲示を見る。
- チャートで型を判定し、連絡先へ問い合わせる。 【A】【C】【D】は管理会社・管理組合、【B】は自治体です。
手順4〜5:取水して自室へ運ぶ
- 容器を持って取水する。 建物内の直結栓が使える場合は1階へ。拠点へ行く場合は、東京都水道局によれば開設状況は水道局HP・水道局アプリ・広報車・ラジオ等で告知されるため、出発前に必ず確認します。
- 容器に受取日を書き、自室へ運ぶ。 階段運搬は前章の往復回数表を参照してください。
つまずきやすいポイントと対処法
断水中、トイレは流していい?
注意
「流していいか」の最終判断は、個人ではなく建物側(管理会社・管理組合)が出すべきものです。誰が判断を出すのかを平常時に確認しておくと、発災後の混乱を減らせます。
復旧後に水が出ない・濁った水が出る
給水拠点に行ったのに水がもらえない
マンションの給水ポンプ交換工事による断水は短くできる?
管理組合に確認したい3点
- 断水時間を短縮する代替給水の手配を検討したか。 仮設の給水手段を用意すれば、全戸が長時間断水する不便を減らせる可能性があります。追加費用と比較する価値があります。
- 断水時間帯の設定。 在宅者の多い時間を避けるのか。高齢者・乳幼児のいる世帯への配慮が必要です。
- 断水中の代替給水。 仮設水栓の設置、共用備蓄からの配布など。
断水になる前に管理会社へ聞く6項目
- 「うちのマンションの給水方式は、直結直圧・直結増圧・受水槽・高置水槽のどれですか?」
- 「1階に本管直結の共用水栓(直結栓)はありますか。ある場合、場所はどこですか?」
- 「受水槽の非常用給水栓(受水槽給水栓)は設置されていますか。鍵は誰が管理していますか?」
- 「受水槽の容量は、居住者の何人分・何日分に相当しますか?」
- 「停電時に給水ポンプを動かす非常用電源はありますか。エレベーターは動きますか?」
- 「地震後、排水管の点検が終わるまでトイレを流してよいかの判断は、誰がどのように出しますか?」
注意点:断水は「数日」で終わらないことがあります
| 時点 | 断水戸数 | 出典 |
|---|---|---|
| ピーク時 | 10万戸超 | 西日本新聞 |
| 2026年7月31日 | 約7万9,100戸 | NHK |
| 2026年8月4日 | 約4万4,000戸 | 産業医科大学 災害産業保健センター |
| 2026年8月16日 | 約8,400戸 | 西日本新聞 |
復旧が長引く背景:水道の耐震化
注意
3日分(1人9L)は最低ラインです。給水拠点からの受け取りを前提にしても、拠点までの距離、階段の階数、家族の体力によって実際に確保できる量は変わります。高層階にお住まいの方、運搬が難しい方は、備蓄量を多めに見積もることをおすすめします。
具体例・ケーススタディ
ケース1:タワーマンション12階・4人家族・停電を伴う地震
- 必要量:4人 × 3L × 3日 = 36L
- 容器:6Lリュック袋 × 4枚(夫婦で2枚ずつ)
- 運搬:12L/回 × 2人 = 24L/回 → 2往復で48L確保
- 拠点までの移動:ゼロ(建物内で完結)
ケース2:5階・一人暮らし・給水ポンプ交換による計画断水
- 事前準備:前夜に浴槽へ水を張る、飲料用に2Lペットボトル5本(10L)を確保
- 対応:トイレはバケツの水、洗濯は前日に済ませる
- 実害:外出して不在にすることで実質的な影響はほぼゼロ
ケース3:離れて暮らす高齢の親(2人)への代理受け取り
- 誰が運ぶかを事前に決める。 同じ建物の住民、近隣の親族、管理組合の共助の枠組み。「頼める相手」を平常時に1人でも作っておきます。
- 必要量を減らす。 親2人の3日分は18L。うち半分を平常時からペットボトルで備蓄しておけば、発災後に運ぶのは9Lで済み、往復が1回減ります。備蓄は運搬量を減らす手段でもあります。
- 建物内の取水口を確認しておく。 実家の管理会社に、前章の6項目を子世代が代わりに聞いておきます。1階の直結栓が使えれば、階段の上り下りだけで済みます。




