地震でエレベーターに乗っていたら、まず全ての階のボタンを押し、最初に停止した階で降りる。これが最優先の行動です。閉じ込められた場合は非常ボタンとインターホンで外部に連絡し、自力脱出は絶対に試みません。
ただし、この記事が本当に伝えたいのはその先です。東京都防災会議「首都直下地震等による東京の被害想定」(2022年5月25日公表)によると、都心南部直下地震で都内のエレベーター停止台数は約166,000台、うち人の閉じ込めにつながり得るのは22,426台(13.5%)とされています。つまり約86%の建物では、誰も閉じ込められないまま数日〜数週間エレベーターが止まったままになります。
高齢の親の通院、水と食料の階段運搬、乳幼児連れの外出。多くの家庭を直撃するのはこちらです。本記事では、閉じ込め時の行動を短く確実に押さえたうえで、「自宅と実家のエレベーターが何時間で復旧する設備なのか」を今日調べる手順と、止まったままの1週間を家族で乗り切る設計に紙面を振り分けます。
対策の優先順位は、①乗っている最中の90秒行動 → ②自分の建物の復旧速度を知る → ③止まった前提の生活設計、の順です。
結論:地震でエレベーターに乗っていたら何をすべきか
揺れを感じたら、全ての階のボタンを押して最初に止まった階で降りるのが最優先です。閉じ込められたら非常ボタンで連絡し、救助を待ちます。自力脱出は行いません。
乗っている最中の行動
行動は3段階に分けると迷いません。
- 全階のボタンを押す:地震時管制運転装置が未設置でも、最寄り階に止まる可能性を上げられます。
- 最初に停止した階で降りる:目的階まで行こうとしないでください。
- 降りたら階段へ:余震・停電で再停止するため、避難にエレベーターは使いません。
地震時管制運転装置が付いていれば、P波(初期微動)やS波(主要動)を感知して自動的に最寄り階に停止し、戸を開きます。国土交通省「エレベーターの安全に係る技術基準の見直しについて」(2009年)では、地震等の加速度を検知してかごを昇降路出入口の戸の位置に停止させ、かごの戸と昇降路の戸を開くことができる安全装置と定義され、2009年9月の建築基準法改正以降の新設エレベーターに設置が義務化されています。
閉じ込められたときの最初の3手
閉じ込められたら、非常ボタン・インターホンで外部に連絡し、その場で待つのが唯一の正解です。
- 非常ボタンを押し、インターホンで状況を伝える
- 応答がなくても、時間を置いて繰り返し押す
- 操作盤に記載された保守会社の連絡先をスマホで撮影しておく
かご内には、停電等の非常時に外部へ連絡できる装置の設置が建築基準法施行令第129条の10で義務付けられています(一般社団法人日本エレベーター協会「エレベーターの外部連絡手段の改善について」2018年)。連絡手段は必ずあると考えて構いません。
天井から脱出しようとする、扉をこじ開ける、といった行動は重大な事故につながるおそれがあります。かごが突然動く可能性があるため、行わないでください。
乗っていないときにやるべきこと
地震後は、建物のエレベーターは「使えないもの」として行動を組み立てます。安全確認が済むまで運転は再開されません。買い物や通院の予定、水の運搬経路を階段前提で考え直してください。
乗車中は「全階ボタン→最初の階で降りる」、閉じ込め時は「非常ボタン→待つ」、その後は「階段前提の生活」。この3つで初動は足ります。
なぜエレベーターは地震で止まるのか?主な原因を深掘り

エレベーターが止まる原因は大きく4つで、このうち「安全のための自動停止」が最も多いとされています。故障ばかりではありません。
原因1:地震時管制運転装置による自動停止
最も一般的な停止理由です。設計どおりの安全動作であり、故障ではありません。それでも、通常運転に戻すには保守員の点検か、自動診断機能による復旧手順が必要になります。
原因2:停電
停電するとエレベーターは停止します。ただし、かご内が真っ暗になることは基本的にありません。建築基準法施行令に基づき、停電灯は床面で1ルクス以上の照度を確保することとされています(東芝エレベータ等の解説による)。明るいとは言えませんが、手元は見える程度の光は残ります。
原因3:昇降路内の変形・異物
建物が大きく揺れると、ロープが他の機器に引っかかる、レールがずれる、扉の敷居に異物が入る、といった物理的な支障が生じます。これは点検・修理が必要な本物の故障で、復旧に時間がかかります。
原因4:保守員が来られない
設備が無事でも、点検する人が来なければ再開できません。フジテック「エレベータの地震対策」(2025年)によると、保守会社は地震後、閉じ込めなど緊急度の高い物件から順に復旧にあたり、停止しているエレベーターの復旧は閉じ込め救出後となる場合があるとされています。
大規模地震では、この「原因4」が復旧時間を決める最大の要因になります。設備が新しくても、地域全体で保守員が不足すれば順番待ちは避けられません。
原因別の見分け方:閉じ込めか、長期停止か
自分の状況がどちらかは、「かごの中に人がいるか」で保守会社の優先順位が変わる点を理解すると判断できます。
| 状況 | 見分け方 | 想定される復旧の順番 |
|---|---|---|
| 閉じ込め発生 | かご内に人がいる/インターホンがつながる | 最優先で救出に向かう |
| 閉じ込めなしの停止 | 扉が開いた状態で止まっている、表示が消えている | 救出対応の後。数日かかることがある |
| 停電による停止 | 建物全体が停電している | 通電後、点検を経て再開 |
| 自動診断による仮復旧 | 一定時間後に自動で動き出す | 200Gal以下で異常なしなら約30分が目安 |
数の上では、圧倒的に多いのは2行目の「閉じ込めなしの停止」です。前掲の東京都想定でも、停止約166,000台に対し閉じ込めにつながり得るのは22,426台にとどまります。
実際の災害でも件数は限定的でした。埼玉県危機管理防災部の資料(2025年、日本エレベーター協会調べ)によると、東日本大震災でのエレベーター閉じ込めは全国20都道県で合計257件。国土交通省「令和6年能登半島地震における被害と対応について」(2024年)では、閉じ込めは14件(石川7・新潟1・富山1・群馬1・愛知2・大阪2)で、2024年4月9日14時現在で全件救出済みとされています。
閉じ込めは「起きたら深刻だが、確率としては少数」。多数派は「無事だが階段生活」です。備えの重心も、そこに置くのが合理的です。
具体的な解決方法:自宅・実家の復旧速度を今日調べる
同じ地震でも、設備の有無で復旧が約30分から数日まで変わります。まずは自分の建物がどのタイプかを診断してください。
5問診断チャート:地震後“何時間”で復旧するか
以下の5問に答えてください。管理会社・管理組合に確認すれば当日中に判明します。
- Q1 そのエレベーターの設置(または全面リニューアル)は2009年9月以降ですか?
- Yes → 地震時管制運転装置は付いている可能性が高い。Q2へ
- No → 管理会社・管理組合に「地震時管制運転装置は付いていますか」と確認。付いていなければ判定Cへ
- Q2 保守契約に遠隔監視は付いていますか?
- 日本エレベーター協会「2024年度昇降機設置台数等調査結果報告」(2025年8月)によると、協会会員が保守する762,223台のうち遠隔監視付は596,096台(約78%)です
- Yes → Q3へ/No → 判定C寄り
- Q3 リスタート運転、または自動診断・仮復旧運転が付いていますか?
- Yes → 判定A/No → 判定B
- Q4 かご内に防災キャビネット・防災チェアがありますか?
- なければ、判定にかかわらず今週の課題です
- Q5 建物は首都直下地震緊急対策区域など、保守員が集中的に不足しうるエリアですか?
- Yes なら、各判定の想定時間を1段階遅い側で見積もってください
判定と、今週やること1つ
| 判定 | 想定復旧時間 | 今週やること(1つだけ) |
|---|---|---|
| A:自動仮復旧型 | 約30分〜数時間 | 防災キャビネットの中身の消費期限を確認する |
| B:遠隔監視あり・保守員待ち | 半日〜1日 | 管理組合に自動診断・仮復旧運転の見積を依頼し、東京都の補助率1/2・上限200万円の対象か確認する |
| C:管制運転なし・遠隔監視なし | 数日〜 | 保守会社に電話し、設置年と装置の有無を確認する |
判定Cの方は、後述の「止まったままの1週間を設計する」で水の必要量の計算例を必ず確認してください。復旧待ちが最も長くなる想定だからです。
全国の3割は地震時管制運転装置が未装備
装置が「当然付いている」と思い込まないことが重要です。前掲の日本エレベーター協会調査(2025年3月31日現在)では、保守台数762,223台に対し地震時管制運転付は523,480台。単純計算で約3割は未装備ということになります。前年度の522,836台からほぼ横ばいで、急速に増えている状況ではありません。
共同住宅用は292,776台、車いす兼用は191,486台です。実家がやや古いマンションであれば、装置が付いていない可能性を前提に確認するほうが安全です。
相手別・確認の一言テンプレ
| あなたの立場 | 誰に聞くか | 言い方の例 |
|---|---|---|
| 分譲マンション | 管理組合・管理会社 | 「防災の確認です。EVの設置年と、地震時管制運転装置・自動診断仮復旧の有無を教えてください」 |
| 賃貸 | 管理会社 | 「地震でEVが止まったとき、どこに連絡すればよいですか。管制運転装置は付いていますか」 |
| 実家(親が持ち家) | 親経由で管理組合 | 「長期修繕計画にEVの地震対策が入っているか、総会資料を見せて」 |
| 実家(親が賃貸) | 親経由で管理会社 | 「停電時にEVがどうなるか、非常時の連絡先を紙で欲しい」 |
電話で聞く際は「設置年」「地震時管制運転装置」「自動診断・仮復旧運転」「遠隔監視」の4語をそのまま使うと話が早く進みます。
ケース別の対処:エレベーター内での90秒プロトコル
同乗者によって、最初の1分の動き方は変わります。特に高齢の親や子ども連れでは、着席と持病の確認が先です。
時間帯×同乗者マトリクス
| 経過時間 | 一人 | 子ども連れ | 高齢の親と | 車いす |
|---|---|---|---|---|
| 0〜10秒 | 全階のボタンを押す/手すりを掴んでしゃがむ | 同左+子どもを抱き寄せる | 同左+転倒を防ぐ | 同左+ブレーキをかける |
| 10〜60秒 | 非常ボタンは押しっぱなしにせず数秒ずつ | 子どもに「すぐ助けが来る」と伝える | 先に座らせ、常用薬とトイレの有無を口頭確認 | 座位のまま姿勢を安定させ、床ずれ・むくみに注意 |
| 1〜5分 | 操作盤の連絡先番号をスマホで撮影→メモも取る | 同左+遊びに変える(数を数える等) | 同左+服薬時刻を確認 | 同左+介助者の到着見込みを共有 |
| 5分〜数時間 | 30分おきに非常ボタンを押し直す/体温を保つ | 水分を少量ずつ/泣いても抱えて落ち着ける | 姿勢を変える時間を決める/会話を絶やさない | 除圧のため定期的に姿勢を変える |
かごは鉄板で囲まれ、鉄筋コンクリートの昇降路内にあるため、携帯電話が圏外になりやすい前提で動いてください。番号は撮影だけでなく紙にも控えます。
やってはいけない3つ
- 天井から出ようとする
- 扉をこじ開ける
- 全員でドアに寄りかかる
かごが復旧作業で突然動く場合があります。扉や天井への働きかけは、いずれも重大な事故につながるおそれがあるとされています。救助を待つのが最も安全です。
持ち物3点セット(個人版・建物版)
- 個人版(かばんに常備):小型ライト/携帯トイレ/モバイルバッテリー
- 建物版(かご内に設置):防災キャビネットの標準仕様は4名×1日分。保存水500ml×10本、簡易トイレ、多機能ラジオライト、アルミブランケット等が入っています(キングジム・コクヨの製品仕様、新宿区の現物支給事業より)
埼玉県危機管理防災部(2025年)も、平成21年9月以降の新設エレベーターには地震時管制運転装置の設置が義務付けられたものの、それ以前の設置機や以後の設置機でも故障等で閉じ込めは起こり得るとして、簡易トイレ・保存水・保存食・ライト・ラジオ等をかご内にあらかじめ設置するよう呼びかけています。
予防・再発防止のコツ:止まったままの1週間を設計する
閉じ込めを免れた86%側にとって、本当の課題は「階段しかない生活」です。特に上層階と要配慮者のいる世帯は、事前設計の有無で負担が大きく変わります。
水と食料の運搬を数字で考える
飲料水は一般に1人1日3リットルが目安とされます。4人家族で1日12リットル、3日で36リットル。2リットルボトルなら18本です。10階まで階段で運ぶと、1回2本ずつでも9往復になります。
だからこそ、備蓄は「エレベーターが止まってから買いに行く」ではなく「止まる前に家に置いておく」が前提になります。運ぶ回数を減らす設計が、そのまま防災になります。
要配慮者別の事前準備
| 対象 | 事前に決めておくこと |
|---|---|
| 高齢の親 | 常用薬の予備日数(できれば1週間分)/通院の延期可否をかかりつけ医に事前確認/階段昇降が困難な場合の連絡先 |
| 乳幼児連れ | ベビーカーは使えない前提で抱っこひもを常備/おむつ・ミルクの備蓄を上乗せ |
| 車いす利用者 | 建物内の避難ルートと介助体制を管理組合と共有/自主防災組織への事前登録 |
| 一人暮らし | 安否確認の相手を2人決めて相互登録/在宅避難できる備蓄を優先 |
在宅避難が国の方針に
2026年6月12日に閣議決定された首都直下地震緊急対策推進基本計画の改定では、対策項目が約4倍に増え、マンションを含む集合住宅の防災訓練実施率を2033年までに100%とする目標が設定されました(住宅産業新聞・日本経済新聞の報道による)。感震ブレーカーの設置目標も緊急対策区域全体へ拡大され、新たに「在宅避難の促進」が減災策として位置づけられています。
つまり、停電・断水・エレベーター停止・通信途絶を前提に、自宅で数日過ごす備えが国の想定でも標準になりつつあります。
備蓄は「避難所に行くまでのつなぎ」ではなく「階段生活を続けるための燃料」。運搬回数から逆算して量を決めてください。
閉じ込め対策の費用はいくら?補助金と決裁ルートの比較
個人でできるのは持ち物と備蓄まで。設備対策は管理組合の決議が必要です。ただし自治体の補助を使えば負担は大きく下がります。
対策5つの比較表
| 対策 | 効果の種類 | 復旧までの時間の変化 | 概算費用の考え方 | 使える公的支援 | 決裁主体 |
|---|---|---|---|---|---|
| ①防災キャビネット/防災チェア | 閉じ込めても耐えられる | 変わらない | 数万円台〜(製品による) | 港区・中央区は現物無償配布/新宿区は1組織1回・最大2個/文京区は上限7万円の助成 | 管理組合(自治体事業の申請主体は組織単位が多い) |
| ②リスタート運転機能 | 閉じ込め時間を短縮 | 自動での復帰を試みる | 改修工事扱い | 東京都「東京とどまるマンション」補助率1/2・上限200万円 | 管理組合の総会決議 |
| ③自動診断・仮復旧運転機能 | 閉じ込め時間を短縮 | 200Gal以下で異常なしなら約30分で仮復旧(日立ビルシステム等の解説による)。なしなら保守員到着待ちで、閉じ込め救出が優先され後回し | 改修工事扱い | 同上(東京都、補助率1/2・上限200万円) | 管理組合の総会決議 |
| ④遠隔監視 | 閉じ込め自体の把握を早める | 検知・連絡が早くなる | 保守契約の内容による | 保守契約の見直しで対応可能な場合あり | 管理組合・オーナー判断 |
| ⑤停電時自動着床装置 | 閉じ込め自体を回避 | 停電時に最寄り階まで運転 | 改修工事扱い | 大阪市の改修補助等 | 管理組合の総会決議 |
主な補助制度(2026年8月時点)
- 東京都:2025年5月30日の報道発表で、「東京とどまるマンション」登録の既存マンション向けに「エレベーター閉じ込め防止対策促進事業」の補助を開始。リスタート運転機能と自動診断・仮復旧運転機能の整備が対象で、補助率1/2・上限200万円。マンホールトイレ整備(補助率2/3・上限40万円)も対象化されました。受付は東京都防災・建築まちづくりセンターです。
- 大阪市:エレベーター防災対策改修補助事業は令和8年度から限度額を拡充。対象工事1〜5は上限273万1千円、工事6・7は上限86万2千円(工事1と併せて実施する場合は71万8千円)。補助率は対象工事費の23.0%。対象は平成26年3月31日以前設置かつ延べ面積1,000㎡以上の共同住宅のエレベーターで、長期修繕計画への計上が要件です。受付は2026年4月1日〜12月18日、工事契約前の事前協議が必須とされています。
- 文京区:中高層共同住宅等エレベーター閉じ込め対策費用助成、上限7万円。
- 港区・中央区・新宿区:防災キャビネット・防災チェアの現物配布制度があります。
補助制度は年度ごとに要件・金額・受付期間が変わります。申請前に必ず各自治体の最新の公式ページで確認し、工事契約前の事前協議が必要な制度に注意してください。
立場別・言い方テンプレ
| 立場 | 誰に | そのまま使える一言 |
|---|---|---|
| 分譲(区分所有者) | 管理組合の理事会 | 「次回総会の議案に、EVの自動診断・仮復旧運転の導入検討を入れてください。東京都の補助率1/2・上限200万円が使えるか確認したいです」 |
| 賃貸(入居者) | 管理会社 | 「かご内に防災キャビネットの設置をご検討いただけませんか。区の無償配布制度があるか確認をお願いします」 |
| 実家(親が持ち家) | 管理組合 | 「長期修繕計画にEVの地震対策を計上できないか、次の理事会で議題にしてほしい」 |
| 実家(親が賃貸) | 管理会社 | 「高齢の入居者がいるため、停電時の対応と非常時の連絡先を書面でいただけますか」 |
専門家・公的情報の見解:どこまでが確認された事実か
本記事の数値は、国・自治体・業界団体の公表資料に基づいています。判断の前提として、出典と公表時期を確認してください。
都心南部直下地震(M7.3)における都内のエレベーター停止台数は約166,000台、うち人の閉じ込めにつながり得る停止台数は22,426台(閉じ込め率13.5%)。前回想定の7,473台から約3倍に増えたのは、2018年大阪府北部地震の実態を踏まえ、閉じ込め発生割合を高く見積もり直したためとされています。
— 東京都防災会議「首都直下地震等による東京の被害想定」(令和4年5月25日公表)
都心南部直下地震の新被害想定では、エレベーター内に閉じ込められる人は約1万6000人。死者は最悪ケースで約1万8000人、経済被害は総額82兆円超と推計されています。
— 中央防災会議 防災対策実行会議 首都直下地震対策検討ワーキンググループ(令和7年12月19日公表)
中央防災会議の2025年12月の想定は、2013年想定(死者約2万3000人)からは改善したものの、「10年で死者半減」の目標には届いていないと報じられています(Science Portal/JST)。
設備の実態については、日本エレベーター協会「2024年度昇降機設置台数等調査結果報告」(Elevator Journal No.55、2025年8月)が基準になります。2025年3月31日現在で保守台数762,223台、地震時管制運転付523,480台、遠隔監視付596,096台、共同住宅用292,776台、車いす兼用191,486台です。
被害想定は前提条件(発生時刻・季節・風速など)で数値が変わります。数字は「上限の目安」ではなく「対策の優先順位を決める材料」として使うのが実務的です。
やってはいけないNG対応
最も危険なのは自力脱出、最も見落とされやすいのは「復旧したはずだから大丈夫」という思い込みです。
- 天井の点検口から脱出しようとする:かごが動き出す可能性があり、極めて危険とされています。
- 扉をこじ開ける:昇降路に転落するおそれがあります。
- 避難のためにエレベーターを使う:余震や停電で再停止します。階段を使ってください。
- 非常ボタンを押し続ける:数秒ずつ、時間を空けて押し直すほうが確実です。
- 管制運転で止まった=壊れたと判断して連絡しない:安全動作である可能性が高いものの、復旧には手順が必要です。管理会社への連絡は行ってください。
- 「新しい建物だから大丈夫」と確認を省く:装置の有無は設置年だけでは断定できません。管理会社への確認が確実です。
- 地震後に自己判断で運転を再開する:点検前の使用は避け、専門業者の確認を待ってください。
体調不良や持病の悪化が疑われる場合は、我慢せず非常ボタンで症状を具体的に伝えてください。救出の優先順位に関わります。医療的な判断は医師にご相談ください。
まとめ:今日やる3つのこと
地震とエレベーターの備えは、次の3ステップで整います。
- 家族で90秒プロトコルを共有する:全階ボタン→最初の階で降りる→閉じ込め時は非常ボタン。
- 自宅と実家の判定(A/B/C)を出す:管理会社に設置年と装置の有無を電話で確認する。
- 判定に応じた「今週やること1つ」を実行する:Aは備蓄の期限確認、Bは補助金の確認と見積依頼、Cは保守会社への確認。
閉じ込めは確率としては多数派ではありません。それでも、止まったままの数日間はほとんどの家庭に訪れます。備えの重心を「耐える」から「暮らす」に移すことが、この記事の提案です。
閉じ込め対策は命を守るため、長期停止対策は生活を守るため。両方を、規模に応じて用意しておきましょう。
よくある質問
Q1. エレベーターに地震で閉じ込められたら、どのくらいで助けが来ますか?
数十分から数時間が一つの目安ですが、大規模地震では長時間になる可能性があります。保守会社は閉じ込め案件を最優先で対応しますが(フジテック2025年)、同時多発時は順番待ちが生じます。東日本大震災では全国で257件の閉じ込めが発生しました(日本エレベーター協会調べ、埼玉県資料2025年)。かご内には保存水・簡易トイレ等を備えておくことが推奨されています。
Q2. エレベーターの地震感知器はどんな仕組みですか?
地震の加速度を検知し、自動的にかごを最寄り階に停止させて戸を開く装置です。国土交通省(2009年)は、地震等の加速度を検知してかごを昇降路出入口の戸の位置に停止させる安全装置と定義しています。P波(初期微動)を先に感知して動作するタイプもあり、S波の到達前に停止させることを狙います。2009年9月の建築基準法改正以降の新設エレベーターには設置が義務化されています。
Q3. 地震でエレベーターが停止したあと、復旧方法はどうすればよいですか?
住民が自分で復旧操作を行うことは想定されておらず、管理会社・保守会社への連絡が基本です。自動診断・仮復旧運転機能があれば、地震動200Gal以下で異常がなければ約30分で仮復旧するとされています(日立ビルシステム等の解説)。ただし通常運転の再開には保守員の点検が必要です。機能がない場合は保守員の到着待ちとなり、閉じ込め救出が優先されるため後回しになることがあります。
Q4. うちのエレベーターに地震時管制運転装置が付いているか、どう調べればよいですか?
管理会社・管理組合・保守会社に電話で確認するのが最短です。設置(または全面リニューアル)が2009年9月以降なら装備されている可能性が高い一方、日本エレベーター協会(2025年)の集計では保守台数762,223台に対し地震時管制運転付は523,480台で、単純計算で約3割は未装備です。「設置年」「地震時管制運転装置」「自動診断・仮復旧運転」「遠隔監視」の4語をそのまま伝えて確認してください。
Q5. 高齢の親が一人で住んでいます。何から準備すればよいですか?
まず「エレベーターが1週間止まっても暮らせるか」を確認してください。優先順位は、①常用薬の予備を1週間分確保できるかをかかりつけ医に相談、②飲料水と食料を階段運搬しなくて済む量まで室内に備蓄、③安否確認をしてくれる人を2人決めて連絡先を共有、の順です。そのうえで、管理組合にかご内の防災キャビネット設置や自動診断・仮復旧運転の導入を相談すると効果が大きくなります。
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最終確認日:2026年8月8日
本記事は公表資料に基づく一般的な情報提供です。補助制度の要件・金額・受付期間は変更される場合があるため、申請前に各自治体の公式情報をご確認ください。建物ごとの設備仕様や安全上の判断については、管理会社・保守会社・専門家にご相談ください。




