停電の備えは何から始める?まず「電気依存マップ」を作る
電気が止まると連鎖して止まるもの
- ひかり電話:光回線の終端装置(ONU)とルーターが電源を失うと、固定電話も使えません
- インターホン・オートロック:来客対応や解錠ができなくなる集合住宅があります
- 電気錠・電動シャッター・電動ガレージ:手動解錠の方法を知らないと出入りできません
- エレベーター:閉じ込めのリスクがあり、高層階では階段移動が前提になります
- 給湯器のリモコン:ガス給湯器でも、電源が必要な機種はお湯が出ません
- 食洗機・電子レンジ・IH・炊飯器:調理手段がまとめて消えます
- 温水洗浄便座・電動ベッド・介護機器:生活の質に直結します
書き出す手順(15分でできます)
- 家の中を玄関から順に歩いて、コンセントにつながっているものを全部メモします
- そのうち「半日止まると本当に困るもの」に印をつけます
- 印をつけたものについて、代わりの手段(乾電池・カセットコンロ・手動解錠など)を横に書きます
- 代わりの手段が書けなかった行だけが、あなたが買うべきものです
この作業のいいところは、家族で共有できることです。「ブレーカーの場所」「電気錠の手動解錠の手順」「給湯器のリモコンの位置」を家族全員が知っている状態は、モノを買うより先に整えておきたい備えです。
わが家の停電ダメージ診断(住まい・給湯・発電の3問)

Q1|住まいは戸建て?マンション?
| 戸建て | マンション(受水槽・加圧給水) | |
|---|---|---|
| 停電した瞬間に止まるもの | 照明・冷蔵庫・通信・電動設備 | 左記に加えて水道・エレベーター・オートロック・インターホン |
| 実は使えることがあるもの | 井戸(手押し)、直結給水なら水が出る場合あり | 高置水槽の残量、1階の共用水栓(管理規約による) |
| この家だけに必要な追加3点 | 感震ブレーカー、ポリタンク、屋外照明 | 給水用ポリタンク+台車、階段用ヘッドライト、エレベーター用の閉じ込め対策キット(水・簡易トイレ・モバイルバッテリー) |
給水車から水をもらっても、10Lのポリタンクは約10kgです。高層階で階段を上る前提なら、大きなタンクより小分けできる容器と台車のほうが現実的です。実際に運べる重さを一度試しておくと安心です。
Q2|給湯はガス?エコキュート(オール電化)?
| ガス給湯(電源必要な機種が多い) | エコキュート/オール電化 | |
|---|---|---|
| 停電時の給湯 | リモコンが動かず使えない機種が多い | 使えない |
| 停電時の調理 | ガスコンロは電池点火なら使える場合あり | IHが止まるためカセットコンロが必須 |
| 使える資源 | — | 貯湯タンクの生活用水370〜460L(飲用不可・高温注意) |
| 追加で用意したいもの | 乾電池、カセットボンベ | カセットコンロ+ボンベ多め、給水ホース、耐熱バケツ |
Q3|太陽光や蓄電池はある?
- 多くの機種は手動での切り替えが必要です。停電したら自動で使えるようになる、とは限りません
- 夜間や悪天候では発電せず、使えません。曇天では出力が大きく落ちます
- 1500Wは合計の上限です。電子レンジやドライヤーを同時に使うと止まります
- 蓄電池がある場合は、特定負荷型(一部の回路のみ)か全負荷型かで使える範囲がまったく違います
家族属性のオーバーレイ(該当するものにチェック)
- □ 在宅酸素・人工呼吸器あり → 下記の事前確認リストへ
- □ 乳幼児あり → ミルク用の水とカセットコンロ、使い捨て哺乳瓶、おむつ1週間分、抱っこひも(暗い階段の移動用)
- □ 別居の高齢親あり → 親宅にも同じ診断を。加えて、連絡がつかない場合の安否確認の手順を家族で決めておく
- □ ペットあり → フード1週間分、飲み水、ケージ、夏冬の温度対策(電気を使わない冷却材・毛布)
- 機器(在宅酸素濃縮器・人工呼吸器など)の内蔵バッテリーの稼働時間をメーカーに確認する
- 外部バッテリーの本数と充電状態を定期的に点検する
- 酸素ボンベの残量と、何時間もつかを把握する
- アンビューバッグ(用手換気器具)の場所と使い方を、家族全員が確認する
- 機器メーカーの緊急連絡先を、紙でも冷蔵庫などに貼っておく
- 訪問看護・主治医への連絡手順を決めておく
- 自治体の助成制度を調べる。東京都などでは、在宅人工呼吸器を使う難病患者向けに非常用電源設備の整備を支援する事業が行われています
在宅医療機器の停電対応は、機種や病状によって必要な手順が大きく異なります。ここに書いた内容は一般的な確認項目です。実際の対応は必ず主治医・訪問看護・機器メーカーに個別に相談してください。
停電で冷蔵庫は何時間もつ?食品の守り方
時間帯別・食品を守る手順
- 停電直後:ドアを開けません。何が入っているか思い出しながら、開ける回数を最小にする計画を立てます
- 〜4時間:冷蔵室はまだ持ちます。この間にクーラーボックスと保冷剤を準備します
- 4時間以降:クーラーボックスに移す判断をします。冷凍室の保冷剤や凍った食品を、冷蔵品の保冷に使えます
- 冷凍室:庫内が半分程度なら約24時間、満杯なら約48時間が目安です。すき間にペットボトルの水を凍らせて入れておくと、普段から保冷剤の代わりになります
- 復旧後:におい・変色・ぬめりがあるものは処分します。「もったいない」で体調を崩すほうが損失は大きくなります
冷蔵庫をポータブル電源で守るべき?
ポータブル電源の必要容量はどう計算する?逆算シート
計算式
必要容量Wh =(Σ 各家電の消費電力W × 1日の使用時間h)× 備える日数 ÷ 0.85
逆算シート(家電別)
| 家電 | 消費電力W | 1日の想定使用時間 | 1日あたりWh | 3日分Wh |
|---|---|---|---|---|
| スマホ充電(家族4台) | — | — | 約60Wh | 約180Wh |
| Wi-Fiルーター+ONU | 12W | 24h | 288Wh | 864Wh |
| LEDランタン | 5W | 6h | 30Wh | 90Wh |
| 扇風機 | 30W | 8h | 240Wh | 720Wh |
| 電気毛布 | 50W | 8h | 400Wh | 1,200Wh |
| 冷蔵庫(庫内維持) | — | 24h | 約600〜1,000Wh | 約1,800〜3,000Wh |
| CPAP(睡眠時無呼吸の治療機器) | 30W | 7h | 210Wh | 630Wh |
| 電子レンジ | 1,000W | 0.2h | 200Wh | 600Wh |
2つの現実的な結論
明かり・電源・調理の6択|実力比較表
6つの手段を比べる
| ①乾電池式LEDランタン | ②モバイルバッテリー | ③ポータブル電源 | ④カセットガス発電機 | ⑤太陽光の自立運転 | ⑥車+インバーター | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 初期費用の目安 | 1,000〜4,000円 | 3,000〜8,000円 | 3万〜20万円 | 8万〜15万円 | 既設なら0円 | 3,000〜1万円(車は別) |
| 3日間で賄える用途 | 明かり(5W×6h×3日=90Wh相当) | スマホ数回分(数十Wh) | 明かり+通信+スマホ(約1,300Wh級で可能) | 用途は広いが燃料次第 | 日中のみ1500Wまで | アイドリング時間次第 |
| 屋内使用 | ○ | ○ | ○ | ×(CO中毒の危険。屋内・半屋内・換気の悪い場所は不可) | ○(コンセントは屋内) | ×(車は屋外) |
| 火災・事故リスク | 低い(液漏れ注意) | リチウムイオン電池搭載製品。発火事故に注意 | 同上。高温保管を避ける | CO中毒・燃料の取り扱い | 感電・浸水時は触らない | 一酸化炭素・バッテリー上がり |
| 点検・買い替えの目安 | 乾電池の使用推奨期限を確認 | 膨張したら使用中止 | 膨張・異臭の確認、定期充電 | 燃料(カセットボンベ)の期限 | 定期点検(パワコン10年前後) | 車のバッテリー寿命 |
| 規制・法令の動き | — | 2027年3月施行予定のPSE規制強化で◇PSEへ移行予定 | 現行の「モバイルバッテリー」区分の対象外 | — | — | — |
| 夜間・雨天 | ○ | ○ | ○ | ○ | ×(夜間は使用不可) | ○ |
プロファイル別のおすすめの組み合わせ
- 一人暮らし:①乾電池式LEDランタン+②モバイルバッテリー2個+カセットコンロ。ポータブル電源より、置き場所を取らず管理が簡単な構成が続けやすいです
- 4人家族:①ランタン複数+③1,000Wh級ポータブル電源+クーラーボックス+カセットコンロ。通信を守りつつ、食品はクーラーボックスに任せます
- 高齢親宅:①ランタン(操作が簡単な大きめスイッチのもの)+②モバイルバッテリー(充電済みで保管)+固定電話の代替手段。操作が複雑なものは、いざというとき使われません
発電機は屋外専用です。ガレージ・ベランダ・玄関先でも、風の通らない場所では一酸化炭素が滞留するおそれがあります。建物の開口部から離れた、風通しのよい屋外で使ってください。
通電火災とは何か?復旧時こそ危ない理由
なぜ復旧時に燃えるのか
- 地震で電気ストーブや白熱灯が倒れ、可燃物に接触した状態になります
- 配線が家具の下敷きになったり、傷ついたりします
- 停電中は通電していないので、何も起きません
- 電気が復旧した瞬間、誰もいない家の中で通電が始まります
- 発熱・スパークから出火し、発見が遅れます
今すぐできる3つの対策
| タイプ | 特徴 | 留意点 |
|---|---|---|
| 分電盤タイプ | 分電盤に内蔵・後付けして家全体を遮断 | 高所作業への配慮、遮断後の保安灯の確保 |
| コンセントタイプ | コンセント単位で遮断 | 遮断の有無の選択と、設置場所の考慮 |
| 簡易タイプ | おもりやバネでブレーカーを落とす簡易な仕組み | 高所作業への配慮、保安灯の確保 |
停電中の情報はどう手に入れる?復旧見通しは自動で来ない
停電前に入れておくアプリ
大規模災害では見通しの公表自体が遅れます
「数日で復旧するだろう」という前提は、大規模災害では崩れることがあります。見通しが出ないまま数日が過ぎる可能性を織り込んで、食料と水は最低3日分、できれば1週間分を目安にしてください(農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」等)。
情報を取るための最小構成
- 停電情報アプリを停電前にインストールし、自宅と実家の地域を登録する
- モバイルバッテリーを、スマホ2〜3回分充電できる容量で確保する
- 手回し・乾電池式のラジオを用意する。通信網が混雑・停止してもラジオは届きます
- 家族の連絡ルールを決める(災害用伝言ダイヤル171、集合場所、連絡が取れない場合の行動)
- 重要な連絡先を紙に書いて保管する。スマホが使えない時間帯に効きます
一人暮らし・高齢親・在宅医療|ケース別の備え方
一人暮らしの場合
- モバイルバッテリー2個(片方は常に満充電で保管)
- 乾電池式LEDランタン+予備電池(スマホのライトはバッテリーを消耗するため、明かり専用を分ける)
- 水9L(3L×3日分)とカセットコンロ(ボンベは3本程度から)
- 常温保存できる食品(ローリングストックで、普段食べるものを少し多めに買う)
- 簡易トイレ(マンションでは断水と同時に使えなくなることがあります)
別居している高齢親宅の場合
- ランタンは大きなスイッチの乾電池式を選び、置き場所を決めて動かさない
- モバイルバッテリーは充電済みの状態で保管し、帰省のたびに残量を確認する
- 使い方を紙1枚に大きな字で書いて、本体と一緒に置く
- 停電情報アプリは、あなたのスマホに親の地域も登録しておく
- ひかり電話の家は、停電時に固定電話が使えないことを伝えておく
在宅医療がある場合
- 機器の内蔵バッテリーの稼働時間は機種で大きく異なります。カタログ値ではなく、実際の使用条件でどのくらいもつかをメーカーに確認します
- 停電時の連絡先(メーカー、訪問看護、主治医、電力会社)を1枚の紙にまとめ、機器のそばに貼ります
- 自治体の助成制度を調べます。東京都などでは、在宅人工呼吸器を使う難病患者向けに非常用電源設備の整備を支援する事業が行われています。お住まいの自治体の保健所や難病相談窓口が窓口になることが多いです
- 医療機関への一時避難の可否を、あらかじめ主治医と相談しておきます
在宅医療機器の停電対応は、必ず主治医・訪問看護ステーション・機器メーカーと個別に相談して決めてください。 この記事の内容は一般的な確認項目であり、個別の医療判断に代わるものではありません。
停電の備えでやってはいけないNG対応
1. ろうそくで明かりを取る
2. 発電機を屋内・半屋内で使う
3. 冷蔵庫を何度も開ける
4. モバイルバッテリー・ポータブル電源の管理を怠る
- 高温の場所に保管しない(車内、直射日光の当たる場所、暖房器具のそば)
- 膨張・変形・異臭があれば使わない。充電もしない
- リコール情報を確認する(メーカーサイト、NITEや消費者庁の公表情報)
- 落下・衝撃を与えたものは使い続けない
- 半年に一度は取り出して、状態と残量を確認する
ポータブル電源は、制度上「モバイルバッテリー」の区分の対象外とされています。規制の対象が違っても、リチウムイオン電池を積んでいる以上、高温を避ける・膨張したら使わないという管理は同じく必要です。
5. 感震ブレーカーを付けて安心してしまう
6. エコキュートのタンクの水を飲む
専門家・公的情報は何と言っている?
数字で見る停電の実像
| 出典 | 内容 |
|---|---|
| 電力広域的運営推進機関(OCCTO)「電気の質に関する報告書 ‐2024年度実績‐」2025年12月 | 2024年度の1需要家あたり年間停電回数0.13回、年間停電時間24分。前年度からそれぞれ0.02回・13分減少。一方、九州では2024年8月の台風第10号の被害等により、年間停電回数が0.07回、年間停電時間が79分増加 |
| 経済産業省「大規模災害時における停電対策について」2019年11月27日 | 2019年台風15号の停電戸数ピーク93万戸、地域別の復旧見通し公表まで約4日半。2018年台風21号は最大約240万戸、台風24号は最大約180万戸、2019年台風19号は最大約52万戸 |
| 内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定について(施設等の被害)」2019年6月 | 最大約2,930万軒が停電。電柱被害に基づく停電の復旧には約1〜2週間 |
| 内閣府・消防庁・経済産業省「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会報告書」2015年 | 大規模地震時の火災の過半数が電気に起因。阪神・淡路大震災139件中85件(61%)、東日本大震災110件中71件(65%) |
| 製品評価技術基盤機構(NITE)2025年6月26日 | 2020〜2024年のリチウムイオン電池搭載製品の事故1,860件、うち約85%(1,587件)が火災 |
九州の数字が示すこと
制度も変わっています
よくある質問
停電で冷蔵庫は何時間もちますか?
エコキュートは停電中に使えますか?
停電対策グッズは何から買えばいいですか?
一人暮らしでも本格的な備えは必要ですか?
通電火災を防ぐには何をすればいいですか?
停電の復旧見通しは、どうすれば分かりますか?
まとめ|今日からできる3ステップ
この記事は一般的な情報の整理です。在宅医療機器の停電対応、住宅設備の操作、助成制度の適用可否は、必ず主治医・訪問看護・機器メーカー・住宅設備メーカー・お住まいの自治体に個別にご確認ください。 制度や補助金の内容は変更されることがあります。




