非常食選びの結論は、「誰のために備えるか」で最適な中身と量が変わるという一点に尽きます。基本の目安は、農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」(2019)が示す最低3日分〜1週間分×人数分、高齢者や乳幼児などの要配慮者がいる家庭では2週間分です。
本記事では、定番のおすすめ非常食5選に加えて、①4人家族②一人暮らし③離れて住む高齢親の3タイプ別に「水は何本・主食は何食・総額いくら」まで落とし込んだ備蓄設計表を掲載します。1人7日分ならスーパー調達で概算約8,000円、5年保存の専用品で約1万2,000〜1万4,500円という費用感を、そのまま買い物リストに使える形で整理しました。
非常食の選び方は?おすすめを決める4つの基準
非常食は①保存期間②調理の要不要③食べる人への適合④入手・管理のしやすさ、の4基準で選ぶと失敗が減ります。
- 保存期間: 専用品は5年保存が主流で、最長クラスは25年(サバイバルフーズ、SEI SHOP公式)。普段の食品を多めに持つローリングストックなら賞味期限1年前後でも運用できます。
- 調理の要不要: 断水・停電を前提に、「水だけで戻る」「そのまま食べられる」ものを核にします。
- 食べる人への適合: 高齢者はかむ力・飲み込む力に応じたユニバーサルデザインフード(UDF)、乳幼児やアレルギーのある人は専用品の確保が必要です。
- 入手・管理のしやすさ: スーパーで買える食品は補充が容易、専用品は買い替え頻度が少なく手間がかかりません。
商品を選ぶ前に「日数×人数」を確定させると、買いすぎ・買い漏れを防げます。次の設計表で自分の世帯の必要量を先に確認してください。
【比較一覧表】世帯タイプ別・非常食の備蓄設計表

4人家族(戸建て)は3日分・主食36食、一人暮らし(マンション)は7日分・21食、要配慮者の高齢親は14日分が設計の起点です。
| 世帯タイプ | 推奨日数(根拠) | 飲料水(3L×人数×日数) | 主食(3食×人数×日数) | 主菜・副菜の目安 | 熱源 | 概算費用: スーパー調達 | 概算費用: 5年保存品 | 置き場所の目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①4人家族・戸建て | 3日分(東京備蓄ナビ) | 36L=2L×18本 | 36食 | 主菜12食+副菜・汁物 | カセットコンロ+予備ボンベ | 約1万4,000円 | 約2万2,000円〜 | パントリー・床下収納(段ボール2〜3箱分) |
| ②一人暮らし・マンション | 7日分(同・集合住宅基準) | 21L=2L×11本 | 21食 | 主菜7〜10食 | 同上 | 約8,000円 | 約1万2,000〜1万4,500円 | クローゼット下段・ベッド下 |
| ③遠方の高齢親(要配慮者) | 14日分(農水省・要配慮者ガイド) | 42L=2L×21本 | 42食 | 主菜14食以上(UDF区分に適合) | 同上 | 約1万6,000円 | 約2万6,000円〜 | 台所と寝室近くに分散 |
費用は後述する「1人7日分シミュレーション」を人数×日数で換算した概算で、地域・店舗により変動します。カセットボンベの必要本数は、使用するコンロのメーカーが公表する燃焼時間の目安から人数×日数分を逆算して確認してください。
推奨日数の根拠: 東京都「東京備蓄ナビ」(2021)は世帯情報を入力すると備蓄リストを自動生成し、戸建て3日分・マンション等7日分を提示します。農林水産省「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」(2019)は、高齢者・乳幼児・慢性疾患・食物アレルギーのある家庭に2週間分を推奨しています。
そもそも非常食はなぜ・どれだけ必要?備蓄の基礎知識
災害支援物資は3日以上届かず、物流停止で1週間は店頭で食品が買えない想定のため、最低3日分〜1週間分×人数分が公的な目安です。
公的機関が示す備蓄量の目安
目安は「最低3日、できれば1週間」です。農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」(2019)によると、大規模災害では支援物資が3日以上届かず、物流の停止で1週間は店頭で食品が入手できない事態が想定されています。飲料水については首相官邸の防災ページ(2026年7月確認)で1人1日3リットル×3日分、大規模災害では1週間分が望ましいとされています。4人家族×7日なら==84リットル=2Lペットボトル42本==という計算です。
「災害が起きてから買う」が通用しない理由
発災直後は店頭から非常食が消えます。2024年8月8日の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表直後には、水・米・カップ麺・非常食の買いだめで各地のスーパーに品切れが発生しました(時事通信・東京新聞、2024年8月)。その後も米不足は長期化し「令和の米騒動」と呼ばれる事態になったと分析されています(三菱総合研究所レビュー、2025年5月)。非常食は平時にしか買えない前提で準備するのが現実的です。
備蓄の実態: 食料はあってもトイレと熱源がない
日本の家庭備蓄は「食料あり・周辺なし」に偏っています。内閣府「防災に関する世論調査」(令和7年8月調査、2025年10月公表)によると、3日分以上備蓄している人の割合は飲料水69.8%・食料品59.8%に対し、食品加熱用熱源は27.7%、携帯トイレ・簡易トイレは27.2%にとどまります。温める熱源がなければ、アルファ米やレトルトの使い勝手は大きく下がります。
非常食とあわせて、カセットコンロ+予備ボンベ、携帯トイレを同時に揃えることが推奨されています。「食料だけ備蓄」は在宅避難で困りやすい典型パターンとされています。
おすすめ第1位: アルファ米(尾西のごはん・安心米など)
迷ったらまずアルファ米です。5年保存・軽量で、お湯や水を注ぐだけで主食になり、全世帯タイプの備蓄の柱になります。
アルファ米は炊いたご飯を乾燥させた食品で、お湯なら約15分、水でも約60分で戻るとされています(尾西食品の商品情報)。尾西食品のメーカー希望小売価格は白飯280円、わかめごはん・五目ごはんなどの味付きが320〜400円(いずれも5年保存)で、味の種類が多く連食しても飽きにくいのが強みです。
- 向いている人: 全タイプ。軽いので一人暮らしの省スペース備蓄や、遠方の親への宅配にも適します
- 注意点: 戻すための水が必要なため、飲料水とは別に調理用の水も見込んでください。かむ力が弱い人にはやや硬い場合があり、湯量を増やして柔らかめに調整するなどの工夫が要ります
最初の1箱は味違いの詰め合わせを選ぶと、家族の好みを確かめてから同じ味を買い増しできます。
おすすめ第2位: そのまま食べられる缶詰(主菜)
缶詰は加熱不要でタンパク質が取れる主菜の第一候補です。サバ缶・やきとり缶など、普段の食卓と兼用できるものを選びます。
非常食におすすめの缶詰の選び方
条件は「プルトップ・そのまま食べられる・普段も食べる」の3つです。
- 缶切り不要のプルトップ式を選ぶ
- 加熱せずおいしく食べられる味付き・油漬けタイプを中心にする
- 普段の食事でも使う定番にして、食べたら買い足すローリングストックに乗せる
- 高齢の家族にはUDF(ユニバーサルデザインフード)マーク付きも選択肢。日本介護食品協議会(2026年7月確認)によると、UDFは「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4区分で、缶詰・レトルトの製品が多く災害時の非常食にも活用できます
缶詰は賞味期限3年前後の製品が多く、スーパー食品(1年前後)と5年保存専用品の中間です。期限管理の負担が比較的軽いカテゴリといえます。
おすすめ第3位: 長期保存水(5年保存)
水は全備蓄の土台です。1人1日3リットル×日数分を、食料より先に確保してください。
首相官邸の防災ページ(2026年7月確認)では、飲料水は1人1日3リットルを目安に3日分、大規模災害では1週間分が望ましいとされています。内閣府調査(2025)でも飲料水は備蓄率69.8%と最多ですが、「本数が足りているか」は別問題です。4人家族×7日分は84リットル=2L×42本で、段ボール7箱前後になります。買う前に置き場所を決め、玄関・寝室・台所などへの分散収納とセットで計画してください。
ウォーターサーバーや浄水器は断水・停電時に使えない場合があります。ペットボトル備蓄を基本とし、他は補助と考えるのが確実です。
おすすめ第4位・第5位: レトルト主菜と保存できるお菓子
第4位はパックご飯+レトルト主菜、第5位は長期保存できるお菓子です。どちらも日常との兼用しやすさで選びます。
第4位: パックご飯・レトルト食品(ローリングストックの主役)
普段食べる物を多めに持つのが第4位です。パックご飯やカレー・丼の素は賞味期限1年前後でスーパーで手に入りやすく、農林水産省のガイド(2019)が勧める「多めに買い、食べたら買い足す」ローリングストックの中心になります。停電時を考え、温めずに食べられるかどうかをパッケージ表示で確認しておくと安心です。
第5位: 非常食におすすめのお菓子(ビスコ保存缶など)
お菓子は栄養と心の両面で役立ちます。ビスコ保存缶などの定番菓子は5年前後の長期保存ができ、火も水も使わずに糖分とカロリーを補給できます。避難生活のストレス下では「食べ慣れた甘いもの」が気持ちの支えになり、子どものいる家庭では特に優先度が上がります。羊羹や、夏場に溶けにくいタイプのチョコレートも定番です。
お菓子は嗜好品ではなく、調理不要の即食カロリー源として備蓄リストに正式に組み込んでください。
目的・タイプ別の選び方(家族・一人暮らし・高齢親)
必要日数は住まいと家族構成でほぼ決まります。まず次の3問診断で、自分の世帯の「型」を確定させてください。
Q1. 住まいは?
- 戸建て → 基本 3日分(東京備蓄ナビ基準) → Q2へ
- マンション等の集合住宅 → 基本 7日分(在宅避難が長引きやすいため) → Q2へ
Q2. 高齢者・乳幼児・食物アレルギーの家族はいる?
- いる → 日数を 14日分 に上書き(農林水産省・要配慮者ガイド2019) → Q3へ
- いない → Q1の日数のまま → Q3へ
Q3. 普段、自炊をする?
- する → ローリングストック型(後述「A案: スーパーで買える非常食のおすすめリスト」へ)
- しない → 長期保存セット型(後述「B案: 非常食セットのおすすめ」へ)
4人家族(戸建て)の場合
量の確保と子どもへの適合が最優先です。3日分でも主食36食・水18本と量が多いため、まず詰め合わせで家族の好みを検証してから同じ商品を箱買いすると無駄が出ません。子どものアレルギー表示の確認と、お菓子枠の確保も忘れないでください。
一人暮らし(マンション)の場合
7日分を省スペースで持つのが課題です。停電でエレベーターが止まると買い出し自体が困難になるため、集合住宅は日数を多めに見ます。軽いアルファ米を主食の柱にし、水はベッド下やクローゼット下段に分けて収納すると生活空間を圧迫しません。
離れて住む高齢親(要配慮者)の場合
14日分+かむ力への適合が必須です。農林水産省(2019)は要配慮者のいる家庭に2週間分の備蓄を推奨しています。UDFの4区分(容易にかめる〜かまなくてよい)を親の状態に合わせて選び、ECから実家へ直送すれば持ち運びの負担もありません。帰省のたびに賞味期限を一緒に点検する運用にすると管理が続きます。
腎臓病・糖尿病など食事制限のある家族の非常食は、自己判断で選ばず、かかりつけ医や管理栄養士に相談することが推奨されています。
非常食セットとスーパー調達はどちらが良い?費用で比較
手間を省くなら5年保存セット(1人7日分・概算約1万2,000円〜)、費用を抑えるならスーパー調達(同・約8,000円)です。
A案: スーパーで買える非常食のおすすめリスト
A案の総額は概算で約8,000円です(1人7日分)。
| 品目 | 数量 | 概算費用 |
|---|---|---|
| 飲料水2L | 11本(3L×7日=21L) | 約1,100円 |
| パックご飯 | 14食 | 約2,100円 |
| 缶詰・レトルト主菜 | 10食 | 約2,500円 |
| カップ麺・乾麺など | 7食 | 約1,000円 |
| 野菜ジュース・お菓子・栄養補助食品 | 適量 | 約1,300円 |
| 合計 | 主食21食+水+副食 | 約8,000円 |
※実勢価格に基づく概算で、地域・店舗により変動します。
賞味期限1年前後の商品が中心のため、食べながら買い足すローリングストックが前提です。日常の食費に吸収されるので、廃棄を出さなければ実質的な負担は初期費用のみに近づきます。
B案: 非常食セットのおすすめ(5年保存)
B案の総額は概算で約1万2,000〜1万4,500円です(1人7日分)。
- アルファ米21食セット: 約5,540〜6,669円(尾西のごはんシリーズAY等、防災館の販売価格)
- 5年保存水2L×11本: 約2,750円前後(実勢価格の概算)
- 長期保存の主菜・おかず10食前後: 約4,000〜5,000円(概算)
5年ごとの買い替えとすれば年額換算で約2,400〜2,900円。期限管理の手間がほとんどなく、買い忘れのリスクが低いのが最大の利点です。買い替え自体を減らしたい場合は、25年保存のサバイバルフーズ(SEI SHOP公式)のような超長期保存品という選択肢もあります。
専用セットは「高いが手間なし」、スーパー調達は「安いが期限管理必須」。自炊習慣のある人はA案、管理が苦手な人や遠方の親に送る場合はB案が向いています。
利用開始までの流れ(今日から5ステップ)
診断→リスト化→購入→収納→点検の5ステップで、最短その日のうちに備蓄を始められます。
- 必要日数を確定する: 前述の3問診断で3日/7日/14日を決めます。東京都「東京備蓄ナビ」(2021)に世帯人数・年齢・住まいの種類を入力すると必要備蓄リストが自動生成され、都外の家庭でも量の目安として使えます。
- 買い物リストを作る: 比較一覧表を自分の世帯に置き換え、アレルギー・UDF区分・家族の好みを反映します。
- 購入する: A案はスーパーとドラッグストア、B案は防災専門店やECで揃えます。発災直後は品切れが起きるため、必ず平時に購入します。
- 収納する: 1カ所集中ではなく台所+寝室+玄関などに分散します。集合住宅では重い水を下段に置きます。
- 期限を管理する: 年2回(例: 3月と9月の防災週間前後)に点検日を決め、スマホのカレンダーに登録します。期限半年前になった食品は日常の食事で消費し、同じ分を買い足します。
ステップ5まで作って初めて「備蓄完了」です。買って満足で終わらせない仕組み(点検日のカレンダー登録)を最初に用意してください。
非常食を備えるメリットと注意点
最大のメリットは物流停止時も在宅生活を続けられることですが、期限切れ廃棄と栄養の偏りという落とし穴があります。
メリット
- 支援物資が3日以上届かず、1週間は店頭に食品がないという公的な想定(農林水産省2019)に対応できる
- 2024年8月のような発災前後の買いだめ・品切れに慌てずに済む
- ローリングストックなら食費の前払いに近く、家計への負担が平準化される
注意点と落とし穴
- 賞味期限切れの廃棄: 賞味期限は「おいしく食べられる期限」であり、過ぎた瞬間に食べられなくなるものではないとされています。ただし非常食は開封の機会が少なく劣化に気づきにくいため、缶の膨らみ・異臭・変色があれば処分し、不安な場合は食べないでください。期限前に日常消費へ回す運用が、安全面でも家計面でも確実です。
- 栄養の偏り: 備蓄は炭水化物に偏りがちです。缶詰・野菜ジュース・栄養補助食品でタンパク質とビタミンを補ってください。
- 周辺備蓄の欠落: 熱源27.7%・携帯トイレ27.2%(内閣府2025)という数字が示すとおり、食料以外が抜けやすい点に注意が必要です。
- 地域差・家庭差: 積雪地や離島は物流回復が遅れる場合があり、日数を多めに設定します。自治体のハザードマップと備蓄推奨もあわせて確認してください。
乳幼児のミルク・離乳食、持病に対応した療養食は一般の非常食で代替できない場合があります。かかりつけ医や自治体の防災窓口への相談が推奨されています。
まとめ: 「誰のために備えるか」から逆算すれば迷わない
- 目安は最低3日分〜1週間分×人数、要配慮者がいれば2週間分(農林水産省2019)
- 第1位はアルファ米。缶詰・保存水・レトルト・お菓子の5カテゴリで組む
- 費用は1人7日分でスーパー調達約8,000円、5年保存セット約1万2,000円〜
- 携帯トイレ・熱源は備蓄率3割弱の盲点。非常食とセットで揃える
- 年2回の期限点検までが備蓄。カレンダー登録を最初に
まずは今日、3問診断で日数を決め、水と主食だけでも買い揃えることから始めてください。
よくある質問
Q1. 非常食は結局、何日分あればいいですか?
A. 最低3日分、できれば1週間分×人数分です。農林水産省(2019)は物流停止で1週間食品が買えない事態を想定しており、高齢者・乳幼児・食物アレルギーなどの要配慮者がいる家庭では2週間分が望ましいとされています。
Q2. スーパーの食品だけで非常食を揃えても大丈夫ですか?
A. 可能です。パックご飯・缶詰・レトルト・水を多めに買うローリングストックは農林水産省も勧める方法です。ただし賞味期限が1年前後と短いため、年2回の点検と食べながらの買い足しが前提になります。管理が難しければ、主食だけ5年保存のアルファ米にする折衷案が現実的です。
Q3. 賞味期限が切れた非常食は食べられますか?
A. 賞味期限はおいしさの目安であり、直ちに食べられなくなる期限ではないとされています。ただし缶の膨張・異臭・変色などの異常があれば処分し、判断に迷う場合は食べないのが安全です。期限の半年前から日常の食事で消費し切る運用にすれば、この悩み自体をなくせます。
Q4. 非常食のお菓子は何を選べばいいですか?
A. ビスコ保存缶のような5年前後保存できる定番菓子がおすすめです。調理不要の即食カロリー源になり、避難生活のストレス緩和にも役立つとされています。夏場の高温で溶けにくいかどうかも確認してください。
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本記事は公的機関の資料に基づいて作成していますが、持病・アレルギーなど個別の事情がある場合は、かかりつけ医・管理栄養士・自治体の防災窓口にご相談ください。価格はいずれも調査時点の概算です。
最終確認日: 2026年7月30日




